治験に参加することによって、自分の健康診断を兼ねることはできますか
第T相の臨床試験の場合、募集対象が「健康成人」となっているため、このような質問を受けることがあります。
ただ残念ながら、結論としては、「一概には言えない」ということになります。
治療を要するほどの異常値が出た場合には、治験の検査でもある程度のことは分かります。その点では、健康診断を全く受けないよりは、健康状態の把握に役立つと言えると思います。
しかし、臨床検査技師としての立場からお話しすれば、以下の理由から、治験に参加できたからといって自分は健康であると思い込むことはオススメしません。
健康診断の結果を見せてもらえない施設がある。
治験実施施設の方針にもよりますが、
健康診断の結果は、治験参加のための採否判定、治験中の健康状態の把握のためにのみ使用し、
被験者さん本人には知らせない施設があります。
検査項目に限りがある
治験で実施される検査項目に異常がなかったら健康であると言えるか…答えはNOです。
治験の検査項目の設定は、
「一般的な健康診断の項目」に「治験薬によって影響を受ける可能性のある項目」
を加えた程度のものであることがほとんどです。
よって、たとえばがん検診や脳ドッグで調べるようなことは一切分かりません。
中長期的な健康状態の把握ができない
そもそも健康診断は、定期的かつ継続的に受け、前回までのデータと最新のデータを比較し、
悪化している数値、データがないかどうかを確認する事に最大の意味があります。
「××という項目は、今までずっと○○位だったのに、今回はやけに高いなぁ…
ということは、何か病気が隠れているかもしれないぞ」という風に。
なぜなら、各検査項目の「基準値」というものが、
必ずしも自分の「正常値」であるとは限らないからです。
少し専門的な話になりますが、基準値とは、
「健康な人の95%がこの範囲の数値になりますよー。」という程度の目安の値に過ぎません。
どんなに健康であっても、5%の人は基準値から外れるようになっているのです。
このため、単発、もしくは回数は多くても、短期間に数回の検査をするに過ぎない治験では、
自分の健康状態を把握することはとても難しいのです。